2010年2月11日木曜日

プリウスのリコール問題と回生ブレーキ

プリウスのリコール問題でしきりに報道されている、ABSのプログラムの不具合の問題。鉄道の世界では結構昔から似た話が出ている気がする。

話題が出始めたのはハイブリット車など影も形もない国鉄末期頃。当時、技術の進歩でブレーキ制御を電子制御で行う事が可能になり、電力回生ブレーキといってブレーキ時に発生する電力を架線に戻して他の電車の動力に使う事も一般的になりつつあった。

しかし、それのみでは制動力が不足したり低速域では効きが悪くなるため、遅れ込め制御といって回生ブレーキを使って極力、電気を架線に戻しつつ、不足分を機械式ブレーキで負担するという制御を行っている。電車がドンドン減速していくと、モーターの発電能力が落ち、電力を架線に戻す事ができなくなる為、ある速度で回生ブレーキを打ち切り、機械式ブレーキの力を増力して停止する。

しかし、そこには、プリウスで問題となっているような、回生ブレーキから機械式ブレーキへの切り替え時の衝撃の問題とか、空走感といった問題があった。小生の居住地の沿線を走っていた電車で言えば、国鉄末期誕生の211系という電車があるが、これが乱暴な電車だった。制御方式の問題から回生を打ち切る速度が高く、20km/hあたりで、渾身の力で制動していたモーターの力が一気に抜け、機械式ブレーキが立ち上がってはいるのであろうが、ガクンと衝撃が起こるのが乗客でも分かる車両だった。当時の電車のブレーキの味付けは乗客として乗っていても衝撃とか空走感が分かる、こんなもんだった。

ハイブリッド車が普通の車から乗り換えてもあまり違和感を感じさせないブレーキフィーリングを実現させている現代。電車の世界もかなり進歩した。数Km/hといった低速域まで回生ブレーキが効くようになった上、回生ブレーキを打ち切った後も、逆起電力、いわばモーターを逆回転させる原理で停止さるなどの制御も加え、さほどの違和感なく停止する事ができるようになった。

ちなみに雪深い北海道の車両は冬季に急激に回生が失効した時に雪を噛んでブレーキが一瞬、効かなくなる現象に備えて予め機械式ブレーキを弱い力で当てているなど、単純比較でシチュエーションは違うがプリウスのABSで問題となった氷上での一瞬の空走に備えた処理も行っている。

今、盛んに騒がれているような話題は、古くからモーターを制動力として使い、機械式ブレーキと併用してきた鉄道では「とっくの」昔からプログラミングの技術の話題として一般市民のヲタク話としても盛り上がっていた訳で、今更な感じとも受け止められる。ヲタク話として「~系がブレーキのプログラムを変更して、純電気ブレーキに変更になった」などプログラムを更新してブレーキの仕様を変更する事もよく行われている。それらは「味付け」の変更であり、「欠陥」のリコールではない。

しかし、トヨタは説明の仕方が良くなかった。確かに技術者的には欠陥とはいえるほどのないプログラミングの落とし穴ではあったと思うが、電気式ブレーキと機械式ブレーキを混用するとこんな問題が起こりうるという、ヲタク的知識を持っている事を前提としたトヨタの説明にマズさがあったのであろう。



211系。「スコココン」という衝撃とともに回生ブレーキが打ち切られ、機械式ブレーキが増力して立ち上がる瞬間の感覚はこの頃の電車の「名物」的シーン。


最近の電車は実に滑らかになった。今回トヨタがリコールで行っているような処置。つまり、プログラムの変更で、どこまでモーターを使った減速を行うか、また、どこで機械式ブレーキの介入させるか等の「味付け」を変更したりする場合もある。

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