2019年10月10日木曜日

THEブラック企業(4)公共性が高い仕事だから何でも許される

あれは5月だったと思う。1台のトラックが長野市内の路上で止まってしまった。

運転手が脳梗塞になり、運行不能になった。

 前章で述べた同資本、同じカラーリングの関連会社のA社のトラックの運転手だった。この便、長野にて我が社とA社で荷物を取り次ぐ特殊な運行形態だったため、翌日だが同路線を自分が走ったため、荷主でクライアントのY社で騒ぎになっていたので一体何が起こっているのかと、A社の運行管理者に問い合わせてみた。色々と話を聞いたが、運転手は、幸いにも一命をとりとめ、手に痺れが残るものの最悪の状態を脱したとの事だった。ただ、24時間以内に運輸局に報告しないといけない重大案件だったようである。さて、Y社とした、主に自分が運んでいた荷物の荷主は何かと言うと、近年民営化された大手運送会社Yのものであって自分の場合ほぼ9割5分その仕事のみであった。

 ヤマト、佐川と凌ぎを削るY社は民営化にあたって、コストダウンに熱心で、長距離運送便の委託化を広く進めたようだ。族議員が嘆く利権の剥奪の陰で、笑う人たちも居たのである。そうやって関連会社のA社がY社の仕事を専門に大きくなり、規模の小さい我が社も長野独特の野菜や食品、その他雑貨が多かったものを、Y社の仕事をメインで受けるようになってゆき、恩恵に預かっていた。Y社があの、消防車のような赤い車で有名な直轄のT社に取りまとめをさせ、A社のような会社に競わせ入札させる。どんどん、仕事は解放され、ホワイトな動きをする直轄T車の赤い車は減って、色々なカラーリングの車が有名なあのマークを掲示して走っている事に気づいた方も多いのでは無いだろうか。

 しかしその陰で、多くの仕事を取りたいが為に、無茶な運行が横行した。13時間走ったら8時間休むなんて改善告知は無視に近かった。

「Y社の仕事は公共性が高いから、多めに見てもらっていると聞きました。」

 長野運輸支局に告発した時も、新潟市の北陸信越運輸局の本庁で聴取された時も、その言葉を発した途端、監査担当職員の表情は険しくなった。

「元の国営事業だからと言って特別扱いをしている訳ではありません。」

「会社はそう言う説明をしただろうけど、やってはいけない事です。」

と始まり、それが公共性が高いから許されるとは誰の発言か?などといった事を中心に。アルコールチェックはしていたか?点検整備はしていたか?それに対して荷主Y社はどう指導していたのかなどといった、運転手としてはあまり詳しく知らないような事まで根掘り葉掘り聞かれた訳である。そして、労基に出したのと同じ、仙台のルートの資料を提出した。労基にて36時間連続運行の指摘がされた資料であるから、運輸でも同等の判断がされるであろうと思われるし、前章で述べたように、運行は継続している。

 結局はY社の監査機能が機能していなかった訳である。監査と称してY社のターミナルでは、輪止めをしているか?積み方は正しいか、危険な荷扱いをしてないかのチェックは良く入るが、運行については全く聞かれた事が無かった。監査と称して委託先を訪れたり、問い合わせるなんて事は皆無だったのではないだろうかと思われる。

 例えばY社のS支社発注の仕事の次にN支社発注の仕事をすると、1運行あたり13時間に収まっているかのチェックはあるのだろうが、その仕事の前にどの路線に入ってようが、一般貨物をやっていようが、どんなに遠くから回送して来ようが、その連続性に関するチェックや監査は皆無だった。つまり、そうやってY社の管轄支社の違う運行を繋げる事によって1日の睡眠時間が5時間に満たないような、東京と長野を日帰りピストンするようなコースや、仙台みたいな往復で1200キロを超えるような行程を二人で表裏でやるような状態が、平常化していたのである。

 多分Y社に取材すれば、うちは荷主としてそんな運行を認めてはいませんと言うだろうし、直轄T社にしても傭車が勝手に違反してやった事と言うであろう。しかし直轄T社の運管レベルは孫請けの我々の面々を直接点呼する機会があり、事情を知っている筈であり。仙台まで片道600キロ、往復1200キロの行程を走って翌々日には長野で点呼する事の不可解さは解っていただろうし、確信犯であろうと思われる。

 何しろ、定期便と言うのは、バスのように出発時間と到着時間が決まっているし、鉄道のように途中や到着ターミナルで他の便に荷物を載せ替えるダイヤで密接に組まれていて融通が効かない。荷物載せ替えに要する時間は驚くなかれ、10分〜15分とまさしく鉄道の乗り換えである。自分が遅れれば接続便の他社のドライバーに、強いては配達が遅れれば日時、時刻指定のお客様に迷惑がかかる。プレッシャーは相当なものである。

 それを、違法にならないように契約を取るのは大変なようである。うまいこと13時間に収まる契約の後に8時間以上休んで、また13時間走るような契約が効率的なのだろうが、そんなにうまいこと往復で都合の良い契約というのもなかなか無いようで、規則を守っている会社はだいぶ仕事の配分に苦心しているようである。

 直轄T社のように完全ホワイトな動きをしようものなら、給料は手取りで20万円を切ってしまう。Y社では8トンと呼称するが、大型の13トン車を操り、手取りで30万円に届かないというのは悲しい。それなら地場の4トンで配送の仕事をしていた方が毎日家に帰れるし、効率的である。

 実は、最近まで、知らなかったのだが、7月の末に我が社にも長野運輸支局の臨時の監査に入っていたようである。労基以上にグズでなかなか動かない運輸にしては速い動きだった。しかし、行政処分はまだ下っていないようである。そういった情報は公益通報者に通知義務はあるものの、こちらから聞かないと、なかなか伝えられないらしく、京浜急行の踏切にてあの痛ましい接触死亡事故があった9月5日の直後に長野運輸支局に電話で尋ねてみて発覚した。

「大事故の時は即日、監査が入るのに、私の告発した案件はまだ動かないですか?」

と聞いて、

「我々も7月に既に入ってますよ。」

と言われてしまい、大恥をかいてしまった。

 しかし、、、まぁ。うちの会社の隠蔽体質も見事なものである。県の環境と警察が入っている事を社員に説明していなければ、労基が入った事も、是正勧告が出ている事も知らせてない。仙台の便はやめる約束な事も知らない。運輸支局の監査が入った事は寝耳に水の話である。

 ネットで調べた所、我が社は直近3年の間に管轄の運輸局は違うものの2回の処分履歴があるようで、3年の断面では3回目になるような臨時の監査である。前回は群馬県の営業所が処分され、70日/車の運行停止処分を受けている。違反のあった営業所や管轄運輸局が違うからどうなるか分からないが、大抵、倍、倍で処分は重くなるし、前回、群馬の処分で9項目、指摘されたような内容について、殆ど改善してなかったようで、同じ内容で処分される場合は特に処分が重くなるようだ。

 今年最大の話題だった、関東西部運輸の事業免許取消がセンセーショナルであったが、台数のある大手でも「やる時はやる」という運輸局の意思表示であるだろうから、しかるべき処分が下るであろう。なにしろ運輸局の処分は大事故でも起こさない限り半年単位、下手したら年単位と、とてつもなく遅く、忘れた頃にやって来る。

 この感触では、年内に処分が下るかどうかといった所が焦点だろうが、140日/車の運行停止あたりが想像される。緑ナンバーの営業車の運行停止とは、ナンバープレートを外して返納して運行できなくしなければならない。今は厳しくなって140日の運行停止について、1台の車のナンバーを140日外して返納しておけば良いだけではなく、台数の指定が来る。割合の計算式はあるらしいが、仮に4台の運行停止となったら140日なら、4分の1の35日で済むが、営業に与える影響は多大である。ましてや365日休まない定期便をやっているのだから、運行停止よりさらに厳しい営業停止が1日でも来たら困る筈である。

 営業停止とは一部の車の運行停止と違って、指定された日数の営業活動一切ができなくなる。今回は法定3ヶ月点検を全車やっていない事も発覚している筈だから、それも前回群馬で指摘された話。営業停止が来る可能性も高い。そうなると定期便を請け負っている会社としては代替手段が無く厳しい状況になるだろう。

 また、元請けA社は運転手が運転中に脳梗塞を起こすという労災事故を起こしたため、何やら内紛があったようで、極端に運行本数が減り、車庫で動いていない車が増えているようである。噂では適法に運行するようになったら給料が下がったため、社員が大挙として辞めたと言う話も聞いたが、あくまで噂話。隠蔽体質だから、向こうも長野でこんな話になっているなんて知らないだろう。

 なんせ我が社は身内のA社や、大手Y社直轄のT社にまで波及しかねない重大な処分が下りそうである。Y社は保険部門の不祥事で大変なご時世、昔で言う運輸省と仲が悪かった関係であるから、ここぞとばかり、動いて来る可能性が高いと思われる。

 以上が身を持って体験している、不祥事の現況である。まだまだ行政の調査は継続中だから今後はどうなるか分からない。世間の注目は殆どないようであるが、行政処分が下ったらどうなるであろうか?

 今回は労働局の動きが思ったより良く、行政処分も次々に出ているし、次なる手もあるようだ。殊勲賞ものであるが、他の役所も手をこまねいている訳ではない。こうやって説明してもなぜ違法なのか、何故騒ぐのか、なかなか理解が得られないようであるが、長野の自然豊かな山中に大量の埋設産業廃棄物が放置されている疑いが晴れない事。「公共性が高いから」という旗印であのY社の運行のデタラメがまかり通ってしまっていたと言う事を世間皆様に周知していただきたく、4話にわたりお話させていただいた。

Twitterアカウント@rokusuke185では随時つぶやいている他、続報がまとまり次第、当ブログでも報告したいと思う。



最後に

8月まで在籍していた会社の責任者が社会に一切謝罪をしておりません。在籍していた元社員といたしまして、社会の皆様に、多大なるご心配とご迷惑をおかけしている事をお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。

-----Rokusuke_S

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